租税資料館賞受賞式出席模様及び本人コメントを掲載しました。

本人へのご連絡は本ページ下部のフォームからお願いいたします。

受賞論文及び審査員の書評

起立中央

(2022年後記)
本ページは何故かアクセス数が多いので後記します。
執筆が終わるのと同時に関係諸機関・国会議員等へ積極的に働きかけたこともあってか、お蔭様で論文内で主張していた事項についての法改正及び税制改正(通達等の改正を含む)が実際になされました。当時私以外に同様の主張をしている論文はなかったでしょうから大変嬉しく思います。

税制については、論文で主張していた部分について完全に実現したわけではないですが、執筆から4-5年の年月を経て、税制を含む社会制度が、論文に記載したように変化しはじめ、自身が論理的に主張し公表した事項について、実際に社会が動いていく様はまさに稀有な体験です。

また、受賞したことによりいくつかの情報が特定の者に伝わったのか、関連する業務で少なくない(人によっては一生分の)金額の仕事にも繋がりました。チャンスだと感じ気合を入れて執筆した甲斐がありました。

振り返ると、何か国もの税制を翻訳しながら整理していた頃を懐かしく感じます。また、当時はまだあまり知られていなかったNFTについても、その後流行するかわからないながらも論文の網羅性のために執筆していたのを覚えています。

何事であっても、しっかりと目標や狙いを定め、真剣に取り組むことの大切さを感じます。
本ページを閲覧しに来ている貴方も論文執筆に関わる方なのでしょう。是非頑張ってください。良い論文がかけたら是非読ませてください。


(2020年3月追記)
当該論文が国立国会図書館に蔵書されました。こちらからご覧ください。

(2019年12月追記)
受賞論文「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題 ―所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に」はこちらの下部から閲覧・ダウンロードすることができます。

公益財団法人 租税資料館の審査員の方々から論文に対する書評をいただいでおりますので、引用します。

 本論文では、仮想通貨等の仕組みや、わが国及び諸外国の仮想通貨等に関する税制、私法上の(あるいは経済的な)性質を考察した上で、仮想通貨等に関連する所得を所得税法上のいかなる所得区分に区分するべきかという問題や、他税目において生じうる仮想通貨等の課税上の取り扱いなどを総合的に検討する。

 本論文では、ビットコインのみを論じるのではなく2000種ともされる仮想通貨等の取引を視野に入れつつ考察を進める。仮想通貨等の性質を論じるに際して、筆者は、仮想通貨の性質を捉えるには、その技術的バックボーンと私法的性質及び経済的性質(通貨性の有無)によって判断すべき旨を強調する。私法的性質の面から法的性質を考えるに当たって筆者は、どのアプローチによって財産権に結びつけて説明するのが適切かを検討すべきであるとする。筆者によれば、私法上の性質を考慮する際に考えられるアプローチには、いずれも困難さや限界があるが、「コンセンサス(民法上の合意よりも消極的)」を念頭に置いて理解することは「合理的かつ現実的である」として、所得の帰属と課税時期の問題に関しては、「コンセンサス・アプローチ」が「一応の解決策を与えてくれる」との評価を下している。経済的性質の観点からは、高度な流通性に基づく通貨性と信用の裏付け、価値貯蔵や価値交換手段としての機能に着目して考察し、「通貨性の有無」により、その性質が異なることを確認したうえで、それぞれの仮想通貨等に通貨性の有無の基準を用いて税法上の取扱いも区別されるべきことを確認している。所得区分については、仮想通貨等の資産該当性を前提として、具体的な取引の態様に応じて区分し、所得税法における具体的なあるべき課税関係を論じる。筆者は、仮想通貨等に関わる多様な所得稼得形態を踏まえると、所得の源泉や性質に応じた区分が必要であるとして、原則雑所得とする国税庁見解に疑問を投じる。英国同様、わが国も定義にかかわらず所得の性質に応じて実態に即した課税を積極的に検討するよう求める筆者の考えがここでも現れている。

 イノベーション(技術革新)による取引の複雑化・多様化に伴い、さらに新たな仮想通貨等が登場しつつある。これらの仮想通貨等取引の市場規模は、現在は相対的には小さいとはいえ、その取引の性質を法的に確定し、租税法律主義と租税公平主義の視点から、その課税の在り方を検討することが不可欠であることを、本論文は指摘している。仮想通貨等の取引は多岐多様であり、複雑であるが、その課税関係を検討するうえで、前提となる基準は「通貨性の有無」であるとの立場から、多様な仮想通貨等の性質と取引の性格を詳細に検討している。仮想通貨等の性質と取引の実態に対応して課税関係を構築すべきであるとする筆者の見解は説得的である。もっとも、複雑で、筆者によれば現段階でも2000種に及ぶ仮想通貨等の性質や取引をめぐる課税関係を、網羅的に論じるのは不可能に近い。その不可能に近い作業を最大公約数で示したのが本研究ではなかろうか。本研究は、一貫した意識の下で、仮想通貨等取引の総合的な検討を試みている。単なる仮想通貨等の解説にとどまらず、その性質論にまで踏み込んで考察をしている点や、カレントなテーマに果敢に挑戦した点でも十分評価しうる。

https://www.sozeishiryokan.or.jp/028-008/

租税資料館賞受賞者への審査員からの書評は、受賞者への今後の期待も込めてか、辛口であるのが通例となっており、一部の学者・研究者等の間では、その辛口コメントが1つの楽しみのようになっています。

実際、他の受賞者の書評を拝読すると、辛口コメントを見ることができます。今回、柴田に対していただいたコメントには辛口部分が見当たらず、高く評価していただけたことがわかります。

授賞式の模様(写真)

式次第
授賞式
授賞式
懇親会(着席右)

本人コメント

他へ寄せた本人コメントを引用・抜粋します。

この度は、租税資料館の名誉ある賞を賜り、至極光栄に存じます。

受賞した論文は「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題-所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に-」です。

ブロックチェーン等のIT先端技術、貨幣論や経済学、民法などの私法等の観点から、学際的に暗号資産(仮想通貨)を捉え、約15か国ほど暗号資産税制を比較し、日本の所得税法、法人税法、消費税法、相続税法等を論じています。

先行研究が乏しく、数少ない先行研究も2000種以上ある暗号資産の1種のみを対象とした研究ばかりであったため、これらを包括的に論じる試みをしました。また、暗号資産に関して「悪魔の証明」を納税者に求めるなど国税庁の示した公的見解に対して、クリティカルに論じています。

ブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれます。「台帳」ですから、会計においては「帳簿」としての可用性があり、「分散」されているため高度な検証可能性を備え得るものです。また、税務においては、キャッシュレス化と組み合わせることで、脱税を非常に困難にする可能性を秘めています。

執筆にあたって、多くの方々から示唆に富むたくさんのご助言をいただきました。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

授賞式を終えての本人コメントを以下に掲載します。

懇親会で伺ったお話では、暗号資産(仮想通貨)に関する応募論文は複数あったようです。そのような中から選んでいただき誠に光栄に存じます。

審査のポイントは「論理性」、「実証性」、「独創性」等だそうです。また、本論文で訴えていた内容の一部について実際に法改正がなされました。

「不可能に近い作業を最大公約数で示したのが本研究ではなかろうか」という頂いたコメントは正しく私の労力を理解していただけており、率直に嬉しい評価です。

今回、執筆に当たってあえて「批判的に論ずる」ということにチャレンジしてみました。それゆえ、中々きつい表現も用いておりますが、これは「自身の論文に対しても大いに批判的に引用してください」という意味でもあります。
(批判に批判を重ねることが、こういったカレントな主題においては、より早く真理に近づくのではないか、という考え方です。)

(どうもこの分野周辺の学術の世界では「偉い学者に反論しない」あるいは「先輩教授の理論を批判しない」といったような風土があるように感じます。真理の追究よりも、保身を大事にしている印象です。)


さて、今回は前回と並び過去最高の115の応募があったようです。しかし、懇親会で伺ったお話によれば、望ましくない応募もあるようです。

通常、このような賞に応募する際は、所属研究科の教授等に「応募してみてはどうか」というご判断をいただいて応募するものだと認識しております。

多くの論文が存在する中で、教授等からそのような進言をいただけるだけでも光栄なことです。その上での100以上の応募と考えると、厳選された論文が応募されているのであろうと推測できます。

しかし、残念なことに、租税資料館代表理事が述べておりましたが、コピペや剽窃を堂々としている論文が毎年あるようです。

確かに高名な学者の筋の通った論理をコピペすれば、内容の質は高まるでしょう。それゆえ、指導教授も応募を打診してしまったのかもしれません。

学術論文において、コピペや剽窃のある論文が存在すること自体残念に思います。

同時に、そのような論文で学位を取得した者及び学位を授与してしまった大学院は、学位の取消しをきちんと行っているのか疑問です。

コピペや剽窃による学位の取得は、学問に対する冒涜であり、また、学問の発展(大げさですが、すなわち人類の発展)を阻害するため、厳しく取り締まるべきであるというのが自論です。

「学問の自由」は「コピペの自由」では決してありません。

税法論文は税理士試験の免除にも使われます。コピペ論文によって免除を与えてしまっていないかについて、国税審査会は厳密にそして遡及的に審査をすることが、試験受験者との公平性を担保することに繋がると信じています。

コピペや剽窃が発覚した場合、既に税理士登録をしていたとしても遡及的に取消しが可能であると伺っています。

「紙媒体からのコピペならばれない」「『てにをは』を変えたり、類義語に書き換えればばれない」などという倫理観に欠いた院生や指導教員も世の中にはいると耳にしておりますが、現代は紙媒体であっても文言をデータ化でき、「あいまい検索」「あいまい一致」を探すことのできる時代ですから、遡及的なチェックはさほど難しくありません。

もっとも、税理士試験自体に他の職業的専門家の難関国家試験に共通して存在する「倫理」又は「職業倫理」に関する科目自体が存在していないため、税理士を目指す者にも倫理観が醸成されずらい土壌となってしまっていると言えるのかもしれません。

本来、税理士という職業は「納税者の財産権の保護」という尊ぶべき使命があるものだと信じています。財産権は近代国家の根底かつ本質的な要素であり、その財産権の侵害規定たる租税法に対し、専門家として従事する存在は重んじられるべきものです。

しかしながら、憲法で租税法律主義が定められているにも関わらず、行政庁の通達どおりの機械的な処理しかせず、納税者の財産権の保護に資するような尊ぶべき税理士は、現代では限りなく希少種になってしまっているのではないでしょうか。「機械的な」仕事は「機械」に取って代わられるでしょう。

財産権の保護に貢献することのできない税理士が多数派となったとき、もはや職業としての税理士は存在意義を失うかもしれません。それはただの「申告事務代行屋」であり、制度のシステム化が進めばなくなる仕事です。

問題提起をするのであれば「税理士試験という国家試験自体が単なる条文や通達の暗記に偏重しており、納税者の財産権の保護に資することができるような税理士の輩出に貢献していないのではないか」という点が惹起されます。暗記偏重型試験の問題点については、過去に税理士試験の試験委員をされていた方もご指摘されておりました。

(いわゆるAIで容易には代替することが難しいとされる)法解釈や法理論を武器として習得できるような試験制度でなければ、(AIで容易に代替可能とされる)単に課税庁の通達どおりの処理しかできない税理士しか誕生しません(試験を実施しているのが通達を発する国税庁なので通達どおりの処理をする税理士を誕生させたいのかもしれませんが…なんだか掌の上で遊ばれてるようですね)。

先月、「税理士がいなくなった国」という海外の実際の事例(私も当該国の電子居住権を有しています)に関する論説を閲覧しました。当該国では,日本のような税理士業務は徐々になくなっていったそうです。諸条件を満たさなければそのような国にはならないため、日本が必ずしもすぐにそのような状況になるとは思いませんが、現行試験制度は本当に適切なものになっているでしょうか。

すなわち、「職業的専門家としての倫理観」、「法律家として財産権の保護に資する税法理解・解釈」の2点において、現行試験内容及び諸制度に疑問を感じるのです。これはプロフェッションとしての在り方にも通じるものです。

また、この2点を満たすことのできない税理士は淘汰されていく世の中になっていくのではないでしょうか。これは多くの専門家、実務家、学者等の各分野に造詣の深い方々が(口にださなくとも)考えていることであると思います。

先日、とある転職サイトの統計データで「税理士の平均年収が400万円台」という結果を見ました。転職サイトのデータなので、そのくらいの年収で募集が掛けられているということでしょう。単なる申告書作成代理人としての税理士業は、急速に進む技術革新の現代においては付加価値を生まず、それゆえ、高収入は見込めません。他方で、法律家としての税理士であれば、そのような税理士が少ない分、希少性が生じ、むしろ高報酬が見込めるのではないでしょうか。

実際、統計データを見るに税理士を志す者の多くは、こういった事実に気がついているようです。税理士試験で5科目合格を目指すことの不合理性に、ネット社会での情報収集も相まってか、気がつく者が増加してきたのでしょう。人生は短い。スタートラインに立つのは早い方がいい。

私は現代の税理士を志す者ではないですが、傍から見ていて、また、多くの実務家及び専門家と触れ合ってみて上のようなことを感じました。

 

話を戻しますが、「令和元年」という記念すべき年に受賞できたことを心より嬉しく思います。

授賞式及び懇親会では著名な学者の方や出版社の方々もご臨席されておりました。

とある出版社の方の「学術に対する出版の姿勢」に関するお話や代表理事の「3つの自由」のお話など、心に響く内容が多分にあり、大変貴重な体験をさせていだきました。

重ね重ね御礼申し上げます。

2022年一部加筆修正

2019年11月記載事項

当法人所属 柴田が執筆した論文が公益財団法人租税資料館の名誉ある賞を受賞いたしました。

受賞論文は、国立国会図書館や全国の大学等研究機関に蔵書される予定です。

当法人に、税法学や租税理論に理解のある人材が所属していることは、判断が難しい税務処理や税務調査等に際して、法学的理解や理論的根拠を裏付けることよって、サービス品質向上に貢献するものと認識しております。

近年、当法人からは税理士登録をする者が増えており、また当法人には税理士の他にも公認会計士等の多様な人材が在籍しております。実務と密接に結びついた学術面においても評価される者がいることは、当法人の人材の多様性確保に資するものです。今後とも、税理士法人に対する多様化されたニーズに応えられるよう、当法人一同さらなる研鑽をして参ります。

後日授賞式の様子、本人コメントを掲載します。

租税資料館・租税資料館賞とは

租税資料館は、株式会社TKCの創業者でもある飯塚 毅博士によって創立された公益財団法人です。税法学並びに税法と関連の深い学術の研究を助成するため、税法等に関する優れた著書及び論文に対して、「租税資料館賞」として表彰を行なっています。(https://www.sozeishiryokan.or.jp/award/a_01.html)

前選考委員長である品川芳宣教授の租税資料館賞に対するコメントを引用します。

我が国では、租税関係の論文を授賞する機関として4つほどありまして、私は、この財団を含めて3つの団体で審査委員を務めていますが、租税資料館賞の応募数は、この4つの団体の中で断トツです。また、応募されている論文の内容をみて、おそらく最も優れた論文が応募されているのではないか、と評価しています。

https://www.sozeishiryokan.or.jp/award/023/z_pdf/ronbun_h26_99_1.pdf

本人へのご連絡

受賞者 柴田へのご連絡は下記フォームよりお願いいたします。