国税庁のWEBサイトから削除されておりましたが、制度創設趣旨は大変重要なものですので、本ページに転載することをもって保存したいと思います。ここから先はご興味のある方のみご覧いただければ幸いです。
税務又は税理士制度等の研究等でご利用になる際には、もともと掲載のあった国税庁のWEBサイトURL(https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/kentoukai/04.htm)を引用元としてご掲載ください。2022年8月頃までは国税庁WEBサイトに掲載されておりました。
現在はキャッシュをWEBアーカイブサイトで閲覧可能です。
https://web.archive.org/web/20220816141935/https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/kentoukai/04.htm
①では、税理士法人制度の創設趣旨として、納税者利便の向上に資するために、複雑化・多様化、高度化する納税者等の要請に対して的確に応え、業務提供の安定性や継続性、より高度な業務への信頼性を確保するためと書いてあります。
すなわち、個人事業者としての税理士業ではこれらの点に限界(あるいは問題)があったといえるでしょう。
また、②記載の「規制緩和推進3か年計画(再改定)」において、税理士について法人制度の創設を検討すべきとされた理由は、「資格者に対する利用者の複雑多様かつ高度なニーズにこたえるとともに、資格者による継続的かつ安定的な業務提供や賠償責任能力の強化などの観点から、必要に応じて資格者の法人制度の創設を検討する。」とされています。
すなわち、これら①②ともに、税理士業が個人事業者として提供できる業務に限界があったことを示唆しており、少なくとも下記3点の問題があったと言えます。
個人事業としての税理士では
・複雑化・多様化、高度化する納税者等の要請に対して的確に応えられていなかった
・業務提供の安定性・継続性・より高度な業務への信頼性を確保できていなかった
・賠償責任能力に限界があった
実際に、税制は毎年複雑化・多様化、高度化しており、一人で各税目や改正論点をカバーしながら実務をこなすことが不可能であることは、専門性が高く能力の高い税理士であればあるほど実感しているところでしょう。
また、個人事業者としての税理士は、税務代理というサービスの安定性・継続性を担保することが困難です。事件・事故・病気等の事情でいつでもサービスが停止しかねないからです。
一般的に税務は期をまたいだ継続的なサービスであるため、これは本質的な問題のひとつでした。
このような問題を少しでも解消し、納税者サービスを充実させるために税理士法人制度が創設されたのですが、その重要な創設趣旨が国税庁サイトから削除されてしまいました。
この創設趣旨を納税者に周知すること自体が、特に個人事業者としての税理士業の限界を知らしめる役割を果たし、納税者等の予期せぬ損害を防止するためにも非常に重要なことでした。すなわち、この創設趣旨を国税庁WEBサイトから削除すること自体が納税者等の利益・要請にそぐわず,納税者利便を損なうものと考え、本サイトに転載しております。
年々税理士に対する損害賠償請求は増加しております。換言すれば、それだけ損害を被っている納税者等がいるということですから、税務関係者はこれらを少しでも軽減しようとする努めを果たすべきです。税理士法人制度の創設趣旨を周知することもその一つです。
以下、念のため国税庁WEBサイトに掲載されていた内容の文字起こしもしています。
税理士法人について
1 税理士法人制度創設の趣旨等
税理士法人制度については、
から、従来、税理士が個人として行うこととされていた税理士業務を、新たに法人形態でも行い得るよう、平成13年の税理士法改正において創設されたものです。
なお、税理士法人は、社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人です。
〔参考〕
税理士法48条の21第4項により商法第80条が準用されていることから、税理士法人の社員の対外的責任については、税理士法人の財産によって税理士法人の債務を完済できないときは、各社員が連帯してその債務を負います。
【ポイント】
・ 税理士法人制度は、納税者利便の向上に資する等の観点から設けられたものです。
・ 税理士法人は、社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人です。
2 税理士法人の業務
税理士法人の業務については、税理士業務のほか、税理士が税理士の名称を使用して税理士業務に付随して行う記帳代行等の会計業務を行うことができるのと同様に、税理士法人においても、定款に定めることにより、税理士業務に付随して行う会計業務や財務省令で定める一定の業務を行うことができるとされています。
【ポイント】
・ 税理士法人の業務範囲は、商法上の会社とは異なり、税理士法で特別に設立が認められた特別法人であることから、税理士法が定めた業務範囲に限定されています。
3 税理士法人に課せられた義務等
・ 税理士法人については、
・ 適用規定
法第32条(税理士証票の提示)、第33条(署名押印の義務)、第33条の2(計算事項、審査事項等を記載した書面の添付)、第40条(事務所の設置)、第52条(税理士業務の制限)、第53条(名称の制限)
・ 準用規定(法第48条の16)
法第1条(税理士の使命)、第30条(税務代理の権限の明示)、第31条、第34条、第35条(意見の聴取)、第36条(脱税相談等の禁止)、第37条(信用失墜行為の禁止)、第39条(会則を守る義務)、第41条(帳簿作成の義務)、第41条の2(使用人等に対する監督義務)、第41条の3(助言義務)
【ポイント】
・ 税理士法人に課された義務のほか、税理士法人の社員等の禁止行為(競業避止義務及び他の税理士法人への加入禁止(法第48条の14)、2ヶ所事務所設置の禁止(法第40条))についても留意する必要があります(問9参照)。
* Q&A形式による解説
〈設立関係〉
(問1) 税理士法人の設立届出や、開業税理士又は補助税理士が税理士法人の社員税理士に就任する場合の税理士登録の変更手続は、いつまでに行う必要がありますか。
(答) 税理士法人の設立の届出は、税理士法人の成立の日から二週間以内に行うこととされており、税理士の変更届出は、登録事項に変更が生じた場合、遅滞なく行うこととされています。
【解説】
税理士法人は、設立の登記をすることによって成立し(法第48条の9)、成立の時に事務所所在地の税理士会の会員となります(法第49条の6第3項)。また、成立の日から2週間以内に、税理士会を経由して日本税理士会連合会(以下「日税連」という。)に届け出なければならないこととされています(法第48条の10第1項)。
一方、税理士は、登録を受けた事項に変更が生じたときは、遅滞なく変更の登録を申請しなければならないとされており(法第20条)、ここでいう変更を生じたときとは、税理士法人が成立した時と考えられます。
したがって、新たに税理士法人を設立する場合の税理士登録の変更登録の申請は、原則として、税理士法人の税理士会への設立届出と同時に提出する必要があります。
また、すでに設立されている税理士法人の社員税理士となる場合も、原則的には、税理士法人の税理士会への変更届出と同時に提出する必要があります。
また、税理士となる資格を有する者が、税理士法人を設立するための前提として税理士登録を行う場合には、当初から社員税理士として税理士登録することが認められます。
なお、当該社員税理士は、税理士法人の成立後でなければ税理士業務を行うことができないこととなります。
〈業務の範囲〉
(問2) 税理士法人の業務の範囲を教えて下さい。
(答) 税理士法人が行うことのできる業務は、
とされています(法第48の5、第48の6)。
【解説】
税理士法人は、法第2条第1項に規定する税理士業務を基本的業務として行う(法第48条の2)ほか、定款で定めるところにより、同条第2項の業務その他これに準ずるものとして財務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができます(法第48条の5、規第21条)。
法第2条第2項の業務とは、税理士業務に付随して行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務をいい、この「その他財務に関する事務」の具体例としては、税務相談業務に付随して行う財務相談や、税理士業務に付随して行う社会保険労務士業務(社会保険労務士法第27条、同施行令第2条)などがあげられます。
また、法第2条第2項の業務に準ずるものとして財務省令で定める業務とは、税理士業務に付随しないで行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務をいいます(基本通達48の5-1)。
しかし、付随しないで行う事務としながらも、
にかんがみれば、無用に業務範囲を広げることは適切でなく、税理士業務と関係のない、例えば不動産貸付業や保険代理店業務等は行うことができません。
なお、税理士法人は、税理士の業務を組織的に行うことを目的として設立することが認められた法人であり、税理士が法令等に基づき、その専門的知見を活用して行っている業務については、税理士法人においても行い得るものとする必要があります。
税理士法人の業務範囲としては、現在、法律で認められている税理士業務及びこれに付随する業務のほか、省令により認められる業務としては、税理士業務に付随しないで行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務がありますが、今後、税理士法人が行う業務としてふさわしい業務があれば、業務範囲に加えていくことも考えられます。
(問3) 法第2条の2により税理士が行える事務(補佐人)を税理士法人が受託するためには、定款の目的に記載する必要はありますか。
(答) 法人が行う業務については、その具体的な内容が分かるように定款に記載しておく必要があります。
【解説】
「目的」が定款の絶対的記載事項とされているのは、当該法人の行為能力の範囲を明確に画するためであり、広く一般人に対して法人が実際に行おうとする業務の具体的な内容が分かるようにしておく必要があります。
法第2条の2に規定する、「税理士が租税に関する事項について裁判所において補佐人として弁護士である訴訟代理人とともに出頭し陳述することができる」ことについては、税理士の形態(開業、社員、補助)を問わずに自然人たる税理士に等しく付与された資格です。
ここでは税理士法人の行為を前提にしていませんので、法第48条の6において、税理士法人は、補佐人にかかる事務の委託を受け、当該税理士法人の社員税理士や補助税理士に(委託者に選任させた上で)補佐人の事務を行わせることができることとされています。
〔参考〕
「税理士法人の手引き」(日本税理士会連合会編集)では、定款並びに登記事項の目的欄に記載すべき事項として下記の例示を行っています。
なお、外部から誤解を受けないように、補佐人としての業務を行う場合には、その旨を積極的に表記しておくべきと考えます。
〈目的等の記載例〉
1 他人の求めに応じ、租税に関し、法第2条第1項に定める税務代理、税務書類の作成及び税務相談に関する事務を行うこと
2 前号の規定のほか、他人の求めに応じ、前号の業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行、その他財務に関する事務を行うこと
3 前2号の業務のほか、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を行うこと
4 租税に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士とともに出頭して陳述する事務を社員又は使用人である税理士に行わせる事務の委託を受けること
(問4) 税理士法人の業務の範囲として、例えば、保険代理店業務や不動産貸付業を行うことは認められるのですか。
(答) 個人の税理士が税理士資格によらずに行い得る、例えば保険代理店業務や不動産貸付業といった業務については、税理士法人が行うことは認められません。
【解説】
税理士法人は、納税者の利便性にかなうために、税理士業務を組織的に行うことを目的として、税理士が共同して設立する法人です。
この税理士法人の業務の範囲については、法第2条第2項に規定する業務並びに財務省令で定める業務(財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行、その他財務に関する事務)とされています。
個人の税理士については、税理士の資格において行う税理士業務と、自然人として税理士資格によらずに行う業務とが存在し得るのですが、税理士法人は特別法人であり、その業務は法第48条の5の規定により限定されていることから、それ以外の業務を行うことはできないこととなります。
したがって、税理士法人の定款の「目的」において、「前各号に付帯する業務」という記載はできません。
(問5) 税理士法人が子会社や他の株式会社等に対して出資することにより、税理士業務以外の業務を行うことはできますか。
(答) 税理士法人は、税理士業務を組織的に行うことを目的として法人格を付与することとされた法人ですので、子会社など他の法人に支配権を有して業務の実質的な多角化を図ることは前提としていません。
【解説】
税理士法人が株式の所有等を通じて企業に対して直接・間接を問わず支配権を保持し、各種の
事業活動等に参画することは、税理士法人創設の理念から逸脱し法第48条の5に抵触すること
となります。
ただし、資産運用の一環として上場株式等を保有することは特に問題はないと考えられます。
〈権利義務関係〉
(問6) 税理士法人に課された権利や義務規定については、どのようなものがありますか。
(答) 税理士法人の権利と義務については、自然人である税理士の権利及び義務等に関する規定が準用されているほか、税理士及び税理士法人の両者を対象とした規定、更には税理士法人固有の義務規定があります。
【解説】
税理士法人が税理士業務を行う際の権利及び義務に関する規定については、税理士法第48条の16において税理士に関する規定が準用されているほか、税理士及び税理士法人の両者を対象とした規定が設けられています。また、税理士法人のみを対象とした義務に関する規定も設けられています。
具体的には次のとおりです。
(1) 法第48条の16による準用
イ 権利等
ロ 義務等
(2) 税理士及び税理士法人を対象とする規定
(3) 税理士法人固有の義務規定
(問7) 税理士法人の名称について、どのような規制がありますか。
(答) 税理士法人は、その名称中に「税理士法人」という文字を使用しなければならないこととされています。
【解説】
税理士法人は、その名称中に「税理士法人」という文字を使用(法第48条の3)し、組合等登記令の定めるところにより登記しなければなりません(法第48条の7)。
この税理士法人の名称について、商法第16条以下(商号)の規定や商業登記法第27条(類似商号登記の禁止)の規定は組合等登記令に準用されていませんので、同じような名称(いわゆる類似名称)で設立登記する場合でも、登記所において排除されることはありません。
ただし、同一市町村内でいわゆる類似名称を使用することによって納税者に混乱を生じせしめるようなことは当然に避けるべきであることから、税理士法人の設立に当たっては、そのようなことがないよう十分留意する必要があります。したがって、同一又は類似の名称による登記を避ける意味から、あらかじめ日本税理士会連合会(以下、「日税連」という。)に同一又は類似名称の有無を照会することが望ましいと考えられます。
(問8) 税理士法人に課せられた義務である「社員の常駐」とは、具体的にどのような状態でなければならないのですか。
(答) 社員税理士が、税理士法人の定款に定める業務を、常時、当該税理士法人の事務所において執行できる状態であることが必要です。
【解説】
法第48条の12においては、税理士法人の事務所には、その事務所(従たる事務所も含まれます。)の所在地を含む区域に設立されている税理士会の会員たる社員を常駐させなければならないとしています。
この社員税理士の常駐に関する規定については、
したがって、「社員の常駐」とは社員である税理士が常時その事務所で執務している状態での実質的な常駐を意味し、形式的な責任者の選任を指すものではありません。
(問9) 税理士法人の社員の禁止行為にはどのようなものがありますか。
(答) 税理士法人の社員は、競業禁止義務や他の税理士法人への加入禁止、自己取引の禁止義務などが課されています。
【解説】
税理士法人の社員は、自己又は第三者のために、その税理士法人の業務の範囲に属する業務を行ってはならないほか、他の税理士法人の社員にはなれません。したがって、税理士業務に付随して行う会計業務等と同じ事業内容の他の会社の無限責任社員や取締役になることもできません(法第48条の14)。
また、社員と税理士法人間の取引及び社員と税理士法人の利益が相反する取引については、商法第75条(社員会社間の取引)の規定が準用されることとされている(法第48条の21第3項)ほか、税理士事務所の設置も禁止されています(法第40条第4項)。
(問10) 旧姓を使用している税理士が社員税理士となる場合、そのまま旧姓を使用することはできますか。
(答) 社員税理士になった場合でも旧姓を使用して税理士法人の業務(法48条の5)を行うことは可能です。
【解説】
平成21年4月以降、日税連の承認を得ることにより、税理士法人の社員税理士については、旧姓を使用して税理士法人の業務を行うことが可能となりました。
〈税理士業務上旧姓が使用できる制度について〉
平成15年4月以降、日税連の承認を得ることにより、開業税理士又は補助税理士については、旧姓で税理士業務を行うことが可能となりました。また、平成21年4月以降、税理士法人の社員税理士についても、旧姓を使用して税理士法人の業務を行うことが可能となりました(日税連の「旧姓使用に関する事務取扱要領」参照)。
税理士業務の遂行上、旧姓が使用できるとは、税理士証票の氏名や申告書、税務代理権限証書及び法第33条の2の書面への税理士としての署名押印が旧姓で表記できるというものです。
また、旧姓使用の承認を得た者は、税理士(税理士法人)業務を行う上では常に旧姓を使用することが義務付けられることから、委嘱者等に誤解や混乱を生じさせないよう留意しなければなりません。
〈競業禁止関係〉
(問11) 税理士法人の社員は、一切個人としての税理士業務を行うことはできないのですか。
(答) 他の社員の承諾の有無に関わらず、税理士法人の社員が個人として税理士業務を行うことや他の税理士法人の社員になることは禁止されています(法48条の14)。
【解説】
税理士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の税理士法人の社員となってはならないこととされており、他の社員の承諾の有無に関わらず、一切の競業が禁止されています(法第48条の14)。
このように、社員に対して例外なく競業を禁止することとしているのは、
等によるものです。
法第48条の14の規定に違反して自己のために取引をしたときは、他の社員の過半数の決議により、その取引をもって法人のためになされたものとみなすことができるいわゆる「法人の介入権」が認められています(法第48条の21第3項による商法第74条第2項の準用)。
(問12) 会計業務を行う税理士法人の社員は、会計業務を行う他の法人の役員に就任することはできますか。
(答) 競業禁止の観点等から会計業務を行う税理士法人の社員は、同じく会計業務を行う他の法人の役員に就任することはできません。
【解説】
法第48条の14において、商法における合名会社の社員の競業禁止規定とは異なり、他の社員の承諾の有無に関わらず、税理士法人の社員が、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行うことや他の税理士法人の社員となることを禁止しています。
税理士法人の社員に対し一切の競業を禁止しているのは、
などの理由によるためです。
税理士法人の利益を守るためのみならず、税理士の公共的使命を踏まえ、顧客(納税者)保護を重視して、税理士法人の社員に対して一切の競業を禁止するという法第48条の14の規定の趣旨にかんがみて、会計業務を行う税理士法人の社員は、会計業務を行う他の法人の役員に就任することはできません。
〈懲戒処分関係〉
(問13) 税理士法人が懲戒処分を受けた場合、所属する社員税理士等にはどのような影響がありますか。
(答) 社員税理士等が自ら懲戒処分を受けない限り、個人的に懲戒処分の責めを負うことはありませんが、例えば、税理士法人が解散処分を受けた場合、当該税理士法人の社員税理士あるいは補助税理士という立場を失うこととなりますし、業務停止処分を受けた場合、停止期間中は当該税理士法人としては税理士業務を行うことはできないこととなりますので、実質的に被る影響は大きいと言えます。
【解説】
(1) 税理士法人が戒告処分を受けた場合
(2) 税理士法人が業務の停止処分を受けた場合
(3) 税理士法人が懲戒処分により解散した場合
税理士法人としての活動は清算結了にかかる事務のみとなります。
(問14) 社員税理士等が懲戒処分を受けた場合、当該社員税理士等が所属する税理士法人にはどのような影響がありますか。
(答) 社員税理士等が懲戒処分に付された場合においても、税理士法人が自ら懲戒処分の対象とならない限り、懲戒処分の効力は税理士法人には及びません。
ただし、法第63条において、社員税理士等において違反行為が行われた場合、当該行為者を罰するほか、当該行為者が所属する法人に対して罰金刑を課することとされています。
また、税理士法人としては、懲戒処分の対象とされた事由等についての再発防止策や社員等が業務停止期間中に税理士業務に携わることがないように監督等を行うといった対応が必要となります。
なお、税理士法人の全ての社員税理士等が、業務禁止や停止の処分を受けた場合、税理士業務を行える税理士が存在しないこととなるので、必然的に税理士法人としても税理士業務を行うことができなくなります。
【解説】
懲戒処分の効力が直接の被処分者以外に及ばないことについては前記のとおりですが、税理士法人の所属税理士等が懲戒処分に付されるといった事態が、税理士法人経営の実質において及ぼす影響については計り知れません。
懲戒処分の起因となった事実に関連する顧問先との関係はもちろん、懲戒処分とは関係のない顧問先からの信用についても傷つくこととなり、税理士法人や他の所属社員税理士等にもダメージが及ばないとは言い切れません(上記(答)においては、あくまでも「懲戒処分の効力」に限って言えば、税理士法人には影響しないとしているところです。)。
また、社員税理士等が税理士業務の禁止処分や停止処分に付された場合、税理士法人としては処分以降(停止処分については停止期間中)、被処分者を税理士業務に携わらせることのないように適切に措置することが必要です。
(問15) 税理士法人が財務大臣による処分を受ける前に解散し、清算結了した場合はどうなるのですか。
(答) 懲戒処分の手続きに付された税理士法人は、清算が結了した後においても手続が結了するまで、なお存続するものとみなされます(法第48条の20第3項)。
【解説】
この規定は、自然人である税理士が懲戒の手続に付された場合の登録抹消の制限(法第47条の2)の規定と同様、財務大臣による懲戒処分の実効性を担保するために設けられたものです。
なお、この「処分に付された場合」とは、税理士法人に対し、違法行為等についての処分に係る聴聞又は弁明の機会の付与について行政手続法第15条第1項又は第30条に規定する通知がなされた場合をいい(基本通達48の20-1)、また、「手続が結了する」とは、処分の通知書が当該処分に係る税理士法人に到達したとき又は国税審議会から財務大臣に対して処分をしないことが相当である旨の答申が行われたときをいいます(基本通達48の20-2)。
〈その他〉
(問16) 税理士法人の社員が死亡した場合、社員の地位の承継はどうなるのですか。
(答) 税理士法人の社員である税理士が死亡した場合には、社員の資格を相続することはできず、単に死亡した社員の持分払戻請求権等を相続(承継)することとなります。
【解説】
税理士法人の社員である税理士が死亡した場合には、税理士登録を抹消され、税理士法人を脱退することとなります(法第48条の17)。
したがって、社員の相続人が税理士であっても、社員の資格を相続することはできず、単に死亡した社員の持分払戻請求権等を相続(承継)することとなります。
また、税理士法人の社員の氏名及び住所は定款の絶対的記載事項であることから(法第48条の8第3項第4号)、社員の脱退により、定款の変更、定款の変更に係る事項の日本税理士会連合会への届出及び変更の登記が必要となります(基本通達48の4-1)。